先日、大手機関投資家がネガティブ・スクリーニング強化の対象分野を「パーム油関連企業(RSPO認証取得率が100%の企業を除く)※」 へ拡大すると発表しました。
しかし、これは生産地の現状や関連企業のこれまでの努力を理解せず、一部のセンセーショナルな報道やキャンペーンのリスクを回避するための判断だったと言えるでしょう。
私たちの暮らしの中に広く浸透しているパーム油が核兵器と同列のネガティブリストとして発表されるべきものなのでしょうか。
RSPO認証油が調達率100%でなくても、自社でサプライヤーの調査をしたり、人権侵害を防止する仕組みを整えたり、生産地の小規模農家を支援している企業もあります。
パーム油最大の生産国インドネシアでは、栽培地の約4割が小規模農家によって管理されていますが、RSPO認証の取得費用が高いため、小規模農家の認証取得率は大規模農園と比べて極めて低くなっています。
したがって、ESG投資が目指すところの、環境破壊や人権問題への対応は、企業がRSPO認証油100%調達すれば済むというものではありません。 むしろ小規模農家の排除につながる可能性もあります。
7月にボルネオ島を訪問し、小規模生産者に会ってきました。ごく普通の農家の方々が自分の農地で人を雇うでもなく、アブラヤシの手入れをしていました。
この様子を9月4日(月)14時からのウェビナーで報告いたします。
※ 本稿執筆時は、「パーム油関連企業=日本企業でパーム油を調達している企業」で「RSPO認証油の調達率が100%の企業を除く」との理解で執筆しましたが、「パーム油生産企業」とも理解できます。この場合、「自社農園の面積がRSPO認証取得率100%」とも「小規模生産者・一次搾油場などのサプライヤーすべてを含む100%」とも理解できます。
いずれにせよ本稿の趣旨に変更はありません。 (2023年9月23日加筆)
(文責:吉田秀美)
日時:9月4日(月)14:00~16:00
参加費:無料(要 参加申込)
参加方法:オンライン視聴(ZOOMウェビナー)
主催:ソリダリダード・ジャパン
< プログラム>
14:00 開会
14:03 「持続可能なパーム油をめぐる施策と企業の対応」
日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター
主任調査研究員 道田 悦代 氏
14:43 「ヘンケル社のサステナビリティ推進事例」
Henkel Consumer Brands
Director of Sustainability Marjon Stamsnijder氏
14:50 「小規模農家から見たアブラヤシ栽培と暮らしの持続可能性」
持続可能なサプライチェーン研究所代表 吉田 秀美
15:10 「ソリダリダードの取り組み」
ソリダリダード・ジャパン事務局長 楊 殿閣
15:30 Q&A
16:00 終了
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